「社会の掟」
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第212話『サービス業とは?マナー講師が語る接遇と顧客サービス、労使間ミスマッチ』

トラ
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こんにちは、トラです。久しぶりの投稿になります。

今回は多くの人が仕事の研修だったり、就職活動、はたまたスキルアップのためのセミナーだったり、どこかで聞いたことであるであろう「サービス業」についての話、フランケンラジオ第212話です。

ここからは、ラジオの音声をベースにした内容です。

サービス業を使って頭を下げさせる人たちは腹立たしい。

接遇講習とやらの講師がいろいろ唸ってるのを久しぶりに聞いて、若い頃のイライラを思い出しちゃったのと、この業種20年以上何も変わってないんだなという感動を覚えたので、思わず録ってみました。

おまけがついてて、クソ長いです。でも、一生に一回くらい聞いておいても損のない話。

フランケン
フランケン

ね、今もたいがい天邪鬼だけど、若い頃はもっといろいろ拗らせてたんです。

どうにもこうにも腑に落ちなかった響きに「サービス業」ていうものがあったんですよ。

ふわっとした語感でいろいろ便利に使われてる感が満載のこの単語、サービス業。

これを使って人の仕事の仕方にケチつけるタイプの人たちに強烈な反発を感じてました。若かったですよね。

まあ、いまでも間違ってはいなかったと思いますけど。

さて、「サービス業」これがなんらかの強制力をもって口にされるタイミングって、個人的な経験ではほとんどが接遇絡みのロジックでした。曰く、「あなたがた〇〇という職業はサービス業なので、接遇は義務だ。客の足舐めろ。」ですよ。接遇。どういう概念でしょうね。

僕は若い頃クソみたいなプライドを拗らせてたから、人に頭下げるのが大嫌いだったんですよ。

いや、自分から頭を下げるのはいいんですよ。

誰かに頭を下げさせられるのが大嫌いだったんですよ。それも無意味に下げさせられるのに対して、怒りすら覚えてましたね。

「お前下っ端だからとりあえず客に頭下げとけ、何のためにって、金のために決まってんだろ」という意図がひしひしと伝わってきて、実に腹立たしかったですね。

接遇研修講師(マナー講師)の話にはサービス業の定義でミスリードがある

しかも、ダメ押しに年一回「接遇研修」とかいう訳の分からない研修とやらに出席義務があったんですよ。

まあ一言で言えば「お客様は神様だから靴でも舐めとけ」という洗脳ですよね。この研修、法人に関わる平社員全員が参加させられる研修だから、内容はレベル低めに設定されてるんですね。

だからもう、穴だらけのロジックで、なにから何までスカスカでした。

一般的に、接遇研修講師がする話には、大体共通したミスリードがあります。サービス業の定義についてですよね。サービス業、という概念、定義が明確化されていないんですよ。

そんなことないだろと思ったら、調べてください。明確な定義がなく、運用実態から使われる曖昧な言葉ですよ。サービス業。サービスには定義がある。でもサービス業にはない。こういうことです。

接遇講師は結構ここを適当にしたままサービス業について言及しますよね。それが僕を徹底的にイライラさせる原因でした。

さて、僕のイライラポイントを整理すると、以下の二つです。

  1. 第三次産業 = サービス業という定義はない。
  2. サービス業 = 接客業 ではない。

接遇についての書籍なんかを調べると、ほとんどがここをごっちゃにしてます。接遇講習の講師もかなりの数がごっちゃにしてる。

フランケン
フランケン

結論から言うと、「接遇とサービス」の間には、なんの関係もありません。

顧客商売において接遇の充足が効果的であることには異論はありません。

接遇が充実している方がしていないよりも、企業経営において好ましいことは明白です。ですが、被雇用者がその理屈に付き合うかどうかというのは別問題になってきます。

ここをはっきりさせずに接遇を義務として被雇用者に押し付けると、反発を生むわけです。若い頃の僕のようにですよ。そして放っておくとテロを起こされる。

さて、接遇面の強化を被雇用者が受け入れるか受け入れないかが、どういう問題を孕むかということを分解していきましょう。

被雇用者は潜在的に「労働量」「報酬」の主観的ミスマッチを望んでいる。

日本における賃金の前提「労働時間の長さ」

前提ですが、この国では賃金は「仕事の成果」ではなく、「労働時間の長さ」に対して支払われているので、ほとんどの人にとって忙しくても暇でも給料は基本一緒です。
ですからそういう人にとってありがたい状況というのは「仕事をしなくてもよく、仕事がなくならない」状況、つまり、なにもしないで一生飯が食えるというものになりますね。

そこにきて、接遇が顧客サービスとして本当に経営的にプラスのインパクトを持つのであれば、接遇を頑張ると顧客が増え仕事は増えるし、手を抜くと仕事が減ることになりますね。

仕事が減ると企業は被雇用者を雇用しきれなくなるので、被雇用者は職を失うリスクが出てくるはずです。ですが、現在ほとんどの職場ではもともと余剰人員を雇用する余裕はなく、人が足りないカツカツの状態で回しています。

全ての労働者は、”主観的には” 忙しい。

ですから、実際に働いている労働者の主観としては「仕事が多すぎる」と感じているはずです。もしそうじゃなければ、その職場には無駄飯ぐらいがいるぞ、ということになり、人を減らしても大丈夫だってことになっちゃいますからね。
全ての労働者は少なくとも主観的には忙しいんですよ。

そうなると、労働者の主観としては「顧客の流入が減って仕事が楽になるとありがたい」という願望になります。なるよね。長期的にはもちろん間違っていて、首が締まるのは自分自身ですよ?でも、さっき言ったように、現在、被雇用者は主観的に「仕事量が多い」と感じている。労働量に比べて報酬が少ない、という主観的ミスマッチを起こしている。だから、労働者が個人的にこのミスマッチを是正するために「報酬が上がる」あるいは「労働量が減る」を潜在的に望んでしまいます。

経営者的目線では、接遇の拡充は極めて合理的な選択である。

労使のギャップは埋まらない。

もちろんこれは、経営的目線としては、どっちもダメなんですよ。今の状態が実はカツカツなんで、「報酬あげる、または労働量を減らす」は、どっちに振っても収支は維持できなくなる。でも、被雇用者は「過重労働で搾取されてる」って感じているわけだから、このギャップは原理的に埋まらない。

こう言った構造下では、被雇用者に仕事が増える方向のアクション、すなわち接遇サービスを強制することは原理的に受け入れられないんです。

「ひどい接遇をして客足が遠のけば、従業員だって困るんだから、そうはならない」って思った人いるでしょう?困ったらね、ほどんどの労働者はその職場を辞めちゃうんですよ。だから「一抜けた」ができる人間の言うことをまともに戦略に取り入れるっていうのは、経営者として脇が甘いです。

ニコニコしててもブスッとしてても経費は同じ。だが、売上が変わる。

さて、経営学的にみると、接遇の改善は顧客へのダイレクトサービスとしてプラスに機能します。つまり、顧客数アップ、フローインにポジティブに作用する。これは事実なんですよ。しかもこのアクションは労働時間を増やさずに、経費をかけずに実施可能です。一言で言えば、ニコニコしててもブスッとしてても経費は一緒で、売り上げが変わるって言う魔法ですからね。だから経営者としてはやってほしいわけです。

近い例で言えば、キャバクラの客引きをおっさんにやらせるよりもお姉ちゃんの方が集客は増えるし、コスプレさせた方がさらに伸びる。労働単位に、「見てくれ」という属性を付加すると、ノーコストで顧客フローが増える。接遇サービスも同じなんです。ノーコストの属性付加によって顧客へのダイレクトサービスを増やす。このためにやるんですよ、接遇の拡充ってやつは。

フランケン
フランケン

この部分についてはね、僕は完全同意ですよ。
経営上、極めて合理的。

だったら、最初からそういえばいいんです。

「これはコスプレなんですよ。メイドのフリをしてくれると不思議と売り上げが伸びるから、意味なんてないけど効果はあるから、メイドのフリをしてよ」まずはそこを経営者が労働者に認めるところからですよ。

それを綺麗事でやろうとするから反発を生むんでしょうね。

接遇はきれいな心でやならければいけない。なんすかそれ。

「メイドになれ、身も心も。」言われた方としては、アホか、でしょうね。心もメイドになるわけないでしょう。

あれ、なんかおかしな話になってきましたね。僕はちょっと性根が腐りすぎてますか?

でもみんな、職場でふんぞり帰ったお偉いさんたちが、内心で顧客のことなんて小銭にしか見えてなくて、でも大事な金ヅルだから「俺の代わりに靴を舐めとけ」って言って、接遇研修とやらを通して靴の舐め方を強制するというこの図式に、完全同意なんですか?ここに疑問を持っているのは僕だけですか?

僕ね、2年目の接遇講習とやらの最初の挨拶で、社長が偉そうに「接遇はサービスの基本だからしっかりと身に付けるように」といって、挨拶だけして出て行こうとした時に、「社長は講習を受けられないんですか?」って手を挙げて聞きましたよ。僕ね、思ってもない理屈を押し付ける馬鹿が大嫌いですから。あ、この社長、いつぞやの回で決算報告で適当なこと言ってたのと同一人物です。最初から僕と折り合い悪かったんだね、この職場は。

労働者の心理負担を下げないと、接遇に対する妥協点が見つけられず離職してしまう。

話を戻してメイドになれ、の話ですよ。

接遇っていうのは、ぶっちゃけ付加サービスだから、コスプレと同じなんです。表面上、顧客にそういうキャラクターだと認知されれば、中身の人間のありようなんてどうだっていいはずなんですよ。心がきれいでめちゃくちゃ無愛想で無礼な接遇と、完璧な接遇で内心で客に舌を出してるのと、どっちが好ましいんですかね。そりゃあ後者になるでしょう。それを認めないとなにも始まらない。妥協点はそこからでしょうね。

まずはね、メイドの服を着てもらわなきゃいけない。メイドになれ、じゃないですよ、メイド服に袖を通して、見た目だけでもメイドのふりをして、です。

メイドの服を着てくれたら、経営者にはメリットが生じるんですよ。取るものとったら、返さなきゃいけない。具体的には、メイドの服をして被るデメリットを解消してあげなきゃいけない。

さっきも言った通り、メイドのふりをすると、顧客フローにポジティブフィードバックがかかるから、労働時間当たりの仕事量が増える。すなわち仕事がキツくなっちゃうんですね。だから従業員としてはメイドのフリは本当はしたくない。
やらないほうが得なんですよ。短期的にはね。

さっきも言った通り、労働者は長期的な視点を持たないです。ですから、待遇を含めて状況が悪い方に変化したら、労働者は次の職場を探して離職してしまいます。これは止められません。
だからせめて、この鬱陶しいコスプレを、「意味なんかないよ、ただのコスプレだから、客は神じゃないよ、赤ちゃんだと思って優しくしてあげてね」くらいの心理負担に下げてやらないと、妥協点がなくなっちゃう。

完璧な接遇「目の前の相手は、お漏らしして期限が悪くなった赤ちゃんだと思う」

これは聞いた話なんだけど、接遇サービスが完璧で、その子が出ると客の満足度も高いし、実際売り上げが伸びる。素晴らしいっていう話になって、みんなの前でコツを講義することになった。そしたらその子、「目の前の相手を、お漏らしして機嫌が悪くなった赤ちゃんだと思ってる。怒らせたら自分でオシメを取り替えなきゃならない。なるべく機嫌良く目の前からいなくなってもらうゲームだと思っている。」と言い放って、その職場辞めちゃった。ひどいでしょう?でも、この酷さで良いんですよ、という落とし所は用意しないと、コスプレする方もやってられない。

間違っても、「お前たちのやってることはサービス業だ。サービスとは顧客サーブする義務を負う。それがお前たちの義務だ。」というスタンスで押し付けちゃダメですよ。

「顧客がサーブされる存在だから、接遇で顧客の満足度を上げろ」じゃだめなんです。

「気分良くさせておいたほうが、トラブル少なくて得だよ?」でいいんですよ。そのかわりセットで経営者が保障する条件として、

「コスプレ対応の接遇でギャーギャーいう客がいたら、上が追っ払ってあげるから」

が必要になります。建前を捨てて実利を取るなら、実利を取りに行くことで生じるトラブルについてはケツを持ってあげないとだめです。ここで、「お前の態度が悪いから顧客を怒らせた。」みたいなことを言っちゃう馬鹿は、「外部接遇を押し付ける以前に、内部マネジメントが終わっている」わけです。

この条件がセットになって初めて、労働者はやりたくもないメイドコスプレを、しゃあないやるか、っていう気分になるんです。何かをやらせるなら、与えるものを与えろっていう話ですね。

この話、聞いてて気分悪くなっちゃった人います?これは僕にとっても大きなリスクですよ。「お前はビジネスにおける顧客をそう思ってるのか」って僕に怒りだす人が出るかもしれませんからね。でも勘違いして欲しくないのは、僕が腹立たしいと思っているのは、「自分が下げるつもりのない頭をひとに下げさせて、頭を下げる行為に『捏造した職業的倫理』とやらを義務として押し付けて平気な顔をしている連中」です。こういう連中に頭を下げさせられることに虫唾が走るよって言ってるんです。頭を下げさせたいんだったら、筋を通せって言ってるんです。そこを綺麗事で押し切ろうとするのは無理だろうって話ですよ。

そう考えると、一番最初に出てきた接遇講師のレクチャー内容なんて、本当はどうでも良いってことになるでしょう?

「身も心もメイドになれ」なんてレクチャーはノーサンキューです。「メイドのフリしてお客をいい気分にさせて、ネガティブイベントを極小化する」これが接遇の即物的な意味です。

だから本当に必要なものは、「コスプレの振る舞い方」になるんですよ。学ぶべきはメイドの心構えじゃない。中身なんていらないです。実際、接遇講習の内容を吟味すると、ほとんどはノウハウです。このノウハウはただの上っ面だから、アップデートもいらない形式論なんですよ。毎年補充される新人に、ビデオでも見せれば十分機能する。

そうなると困る人もいるんですかね。だから接遇そのものになんらかの特別な意味合いを持たせたくなるだろうし、それを授けることに何かのプロフェッショナリズムをくっつけたくなるんでしょうかね。

いずれにせよ、不況とともに消し飛ぶタイプの職業であろうかとは思います。

相変わらず性格悪くてすみません。今日は人の仕事にケチをつけまくって終了です。

本編おまけ。人生で一回くらいは聞いといていい話。(総務省の職業分類資料を読み解く)

さて、オマケをくっつけておきましょう。このオマケは、僕が勉強した資料です。だから、この話題についてもうお腹いっぱいっていう人は聞かなくて良いです。なんの話かというと、サービス業とは何か?という部分について、日本標準職業分類、日本標準産業分類を読んだサマリーです。だいぶウザい話になりますから、最後まで聞かないでくださいよ。僕のメモです。

どうぞここでピッと止めちゃってください。

フランケン
フランケン

]あなたも相当な物好きですね。

じゃあ、付き合ってもらいます。

自分で調べることなんて皆さん絶対にないでしょうから、一度は聞いておいて損はさせません。接遇の講師を雇わされてる法人役員も、かれら、まあほとんど彼女なんだけど、奴らの足元っていうのは知っておいて損はないですよ。

サービス業とは、みたいな話が出てくるときに接遇講師がポロっと言いがちな職業分類の話から。

まずは「総務省、日本標準職業分類」の簡単なまとめです。

この中で「職業」というものは、ざっくりとAからLまで12の大分類に分けられます。その中に紛らわしいけど「サービス職業従事者」という大分類のEというものがあって、それがさらに35番から42番までの8つの中分類に分かれてます。

https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/shokgyou/kou_h21.html

まとめサイトなんかでは、このEの35から42までの8つを並べて「これがサービス業です」ってやっちゃってるものが大多数ですね。

項目だけ読んでみると、家庭生活支援、介護、保健医療、生活衛生、飲食物調理、接客給仕、移住施設ビル、その他、ってな感じで、ぱっと見では世の中でサービス業って呼ばれているものを大体網羅してる感じもあるんです。

ですが、ここ大区分Eってやつに入ってくる人間って、実際はそんなに多くないんです。サービス業って、国民の70%を占めるとか言われちゃってますけど、この区分にはそんなにいないですよ。

なんでかというと、今言った大分類Eの35から42というのは、単なる人間の分類なので、ここに区分される職業がサービス業というわけではないからです。

そもそもの話、典型的なサービス業と思われる飲食店チェーンの社長なんかはどこに入ってくるでしょうか。大区分の一番最初、Aという区分はは管理的職業従事者というもので、01−04の4つからなっています。管理的公務員(議会議員、管理的国家公務員、地方公務員)法人、団体役員管理職員、その他の管理的職業従事者、というのがここに入ってくる。一般的に「サービス業」と呼ばれる職種の経営者なんかはここに入っちゃう。

なんでこんなことになっちゃうのかっていうと、そもそも「日本標準職業分類」は業種の分類ではなく、個人が従事してる職種の分類なんですよ。飲食店なんて、サービス業の最たるものじゃないですか。でも、飲食会社の社長は大分類A中分類021の会社役員です。従業員は大分類E中分類391で「飲食物調理従事者」か、あるいは403の接客給餌職業従事者という中分類の「飲食物給餌従事者」です。この二つは大分類Eの「サービス職業従事者」にあたります。同じ会社でもポジションによってサービス業従事者だったりそうじゃなかったりと、おかしなことになっちゃったでしょう?この分類はあくまで人に対応するもので、業種について言及していません。

こういうと、ウェイターが従業員としてサービス職業に分類されるなら同じことだろ、と思っちゃう人もいるでしょう。でも残念なことに、資格職のほとんどはこのサービス職業から区分が抜けちゃうんですね。

例えば病院。病院の中でサービス職業に残るのはE371の看護助手とE379のその他の保険医療サービス職業従事者、です。ほとんどの人間は、大分類B専門的技術的職業従事者の中分類12−16に含まれちゃう。これは読んでおきましょうか中分類12、医師歯科医師、獣医師薬剤師、13保健師助産師看護師、14医療技術者、15その他の保健医療従事者。病院の中で「サービス職業」に分類される人は助手と事務員くらいしかいなくなっちゃいましたね。

さっき言った大分類Eのサービス職業従事者という括りが意味ないことがわかっていただけたでしょうか。接遇講習とかに参加させられたときに、最初の5分くらいで「サービス業とは」みたいな話が始まるはずですから、注意して聞いてみてください。大抵はユルフワと「お前の会社はサービス業、だからお前ら全員サービス業、客の奴隷」みたいな話をします。ちょっとまともな人なら何かの資料を持ち出してお前らの会社はサービス業だぞ、と凄んできます。そこで引き合いに出てくるのがこの「総務省、日本標準職業分類」なら、それ以降の話は聞かなくていいです。全部プロパガンダです。

さてじゃあ、「でも、医療って、サービス業だって聞いたし、そもそも製造業以外の第三次産業って、サービス業じゃないの?」という疑問を持つ人もいるでしょう。そのツッコミは最もです。

業種としての分類はどうなっているか。「日本標準産業分類(JSIC)」から。

だから、働く人ではなく、業種としての解釈はどうなっているのかという話をしなくちゃいけないですね。これも総務省の管轄ですので大きな矛盾はなく先ほどの「職業分類」と共存しています。

さっき出てきた職業をやる人の分類、「日本標準職業分類」とは別に、業種としての分類、つまり産業の分類が「日本標準産業分類(JSIC)」として公開されています。さっきの「職業」じゃなくて「産業」。

https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/index.html

よく、「サービス業とは、一次産業、二次産業をのぞいた三次産業全般のことを指す」という記載を見かけますね。これ、当たり前のようにそう言われていますが、実は解釈が割れています。

というのも、総務省は、産業を「財を作り出す仕組み」で区分しているだけなんですよ。このJISCという分類には「一般原則」というものが付帯されていて、その第三項に「この分類は統計調査を確定して表章するために体系化したもの」と書かれています。すなわち、これは単純に統計調査をするために分類したものであって、この区分に従ってどうこうしろというものではないんですよ。

ざっくりというと、この分類では産業を「財」という観点で捉えていますから、具体的に目に見える形の「財」意外のものに名前をつける必要があったっていうことです。そこで、それらを「サービス」っていう単語で読みかえた。実際にこの付帯の中では「生産される財、または、提供されるサービス」というセット表現、「財またはサービス」というセット用語を統一的に使っている。財とサービスを分けて考えることに意味を与えて無いようです。

多少ややこしい話をしますけど、じゃあ「かたちのあるもの」は財なんだから、その「財」を売ったら「サービス」を売ったことにならないですよね?でも、普通は1、2次産業で作った生産物を加工して商品を小売するのは第三次産業とみなされてますよね。コメを作るのは一次産業。でも、炊いておにぎりにして打ったら飲食で第3種産業。鉄を作るのは第二次産業。でも、針金を束ねて小売店に卸すのは何産業?こんがらがってきましたね。

細かいことを言い始めるとだんだん深みにハマるので、総務省が「JSICにおけるサービス分野」と捉えるものは結局なにかと言うと、『JSIC大項目の「FからRのうちI」を抜いたもの』です。そう書いてあります。

FからRというのは、電気ガス情報通信、運輸、「小売おろし」、金融、不動産、学術、宿泊、飲食、娯楽、教育、医療、その他、です。

で、そのなかから、あえて大分類「 I:小売、おろし」を除外する。

小売業、おろし、サービス業じゃなくなりました。これ、わけわかんないでしょう?JSICに従って、サービス業を定義しようとすると、「財またはサービス」で分けることになり、第一次二次産業と一緒に、あきらかな第三次産業であるところの「小売やおろし」がサービス業から抜けていく。

サービス業だから接遇が必要だっていうロジックを用いると、

AからEはサービス業じゃない。Iもサービス業じゃない。

じゃあ、この分野は接遇が不要っていうことになるんですよね?

人生で一回くらいは聞いといていい話。

そんなわけないじゃないですか。だいぶややこしいですが、このロジックを用いるならば、「日本標準産業分類」を持ち出すと矛盾が生じるということがわかりましね。

…ここまで聞いちゃったあなたは相当に暇人だとは思いますが、この話、人生で一回くらいは聞いといてもいい話かもしれませんね。

はい、そんなわけで、「サービス業だから接遇は義務だ、客の靴舐めろ」という詰め方をする接遇講師が、その根拠として「日本標準職業分類」「日本標準産業分類」を持ち出したら、その話はウソです。後でやんわり訂正してあげて盛大に嫌われてください。

トラの感想

今回の話を聞いて。経営者と労働者は相容れない存在だと再認識した。

「人生で一回くらいは聞いといていい話」というのは本当です。

労働者が主観的には「自分は忙しい」と考えており、長期的視点を持たず仕事量が減ることを望んでいるという点は、とても共感できました。

仕事に社会的意義を求めないのであれば、経営者側が明確に「これはコスプレだから」と真実を言ってくれた方が無理な顧客サービスを求められるより心理的負担が下がって結果としてより良い結果を生むのではないかと私も思います。

前回の投稿から、非常に間隔ができてしまったのには理由があります。
私自身の本業の忙しさもありますが、この話を記事にするにあたって非常に時間がかかりました。

音声コンテンツそのものの長さはもちろん、自分の中で腹落ちするにあたって何度も聞き返していたからです。

最後のおまけの部分の聞き込みに最も時間を要したのは言うまでもありませんが。

管理人
トラ
トラ
勤め人
アラフォーの勤め人。
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