「社会の掟」
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第209話『あなたの給料はなぜ上がらないのか(上)』

トラ
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こんにちは、トラです。

給料、上がりませんよね。
直接マネーを生む仕事をしていないから、と言ってしまえばそこまでなのですが、簡単には上がりません。

私の勤め先のシステムでは、昇給は年に1回。
ただし、上がるかどうかは分からない。こんな感じです。

休日週1回のアルバイトでもやったほうが良いんじゃないかと思っています。

さて今回は、こんな『給料が上がらない』問題についてのお話、第209話の文字起こしです。

フランケンさんは、従業員(被雇用者)の給料がなぜ上がらないのか、その理由は2つだとおっしゃっています。

『年次昇給』
『解雇・減給が出来ない』

今回は第1の理由、年次昇給についてのお話です。

第209話から第211話までの3部構成になっているので、ゆっくりとお楽しみください。

「自分は頑張っているからもっと給料が出て良いはずだ!」と思っている方には厳しいお話かもしれませんが…。

フランケンラジオ第209話文字起こし

フランケンの略道入門ラ~ジオ~。
なんて言いつつ、やっぱり略働ネタはあんまりできてないんですよ、実は。

ゆるふわ とかそういう話ばかりして、それを反省している今日この頃です。

なので、今日はちょっと直球ストレートっていうのを久しぶりに投げてみたいと思います。

昨日ですね、とある企業のセミナーをやったんです。
その中で被雇用者、雇われる側のモチベーションの捻出とか、雇用者が知っておくべきような知識の整理みたいなものにさわりで触れたんですよ。

セクションのタイトルとしては、コラムとしてね、『従業員の給料なぜ上がらないのか』というようなコラムもやったんですよ。

これはね、ドン引きもドン引き。

でもめっちゃ面白かったですよ。普通講演とかやってドン引かれると辛いものがあるんですけども、この『給料がなぜ上がらないのか』ネタのセミナーやって、引かれれば引かれるほど良い。これ、鉄板の話なんですよ。

というより、労使の基礎中の基礎の話なんですよ、この給料の話って。
そんな話をね、ちょっとやっていきましょう。

一回切りまーす。

給料が上がらない理由は2つ。年支持昇給と解雇減給規制。

さてこの国において、従業員、被雇用者ですよね、この給料はなぜ上がらないのかっていう質問に対してどう答えましょうか。

最近ね、このメッセージっていろんなとこで聞くので、正解がパンッと出てくる人がだいぶ増えたなって感じです。
これ、ちょっと考えている人というかそういうのを知っている人なら、「給料は、なぜ上がらないのか」って言われたら「下げられないから」って答えるんですよ。

大体それで合ってますね。ただし、それにきっちりとストーリーを付けられるなら、それは正解ってことで合ってるんですよ。

下げられないから、クビにできないからっていうのは相当いい線いってるんですけれども、それだけだとちょっと片手落ちだなーというふうに僕は思うんです。

そんなわけで、僕の答えというのは二つあるんですよ。

なにの答えかっていうと、『給料っていうのは、なぜ上がらないのか?』

まず一つは終身雇用による年次昇給、このシステムが生きているから上がらない、逆にね。

もう一つは、解雇減給っていうのができないから。

この二つによって、給料が上げられないということになるんですね。

あえて二つに分けましたが、これはつまるところ、一つのストーリーで説明することができます。
これをちょっと見ていきましょう。

仕事の内容と報酬の設定には関係がない。労働力再生産の話。

まず一つ目の『終身雇用』。
これがあるから無理に無意味に上げられない。
終身雇用の弊害だよって話なんですけど、これは何かと言うと、終身雇用のシステムにおいて仕事の内容と報酬の設定っていうのには、厳密には関係がないんですよ。

仕事の内容が貴重な仕事やっているから報酬が高いとか、そういう話になんないですよ。
これはおさらいになっちゃうんですけども、いつものやつ、よく聞くマルクスの話になってくる。
これを復習しておきましょう。
労働者の給料とは、一言で言えば商品の代価になってくる、労働者は労働力を商品として資本家に売っているというわけですよね。
それでその額っていうのは、その労働力を生み出すために必要とした資源の合計になるわけです。なんていうか、1日働くとこの労働資源、労働力というのはなくなっちゃいます。

それを回復するために必要なものを手に入れるためのお金、これが給料になる。
それが日割りで出るって事ですよね。

それは食事であったり、睡眠するための家であったり、衣食住にかかる経費ですよ。娯楽にかけるお金っていうのも、その経費に含んでくれる。

そして次の朝には労働力を回復して、1日分の労働力を商品として資本家にまた売る。
これをサイクルとして繰り返すから、そこの労働力っていうのをもう1回つくる再生産するための経費が給料になって、これサウザーさんがよく言っていること。

日本の労働者は、仕事の量ではなく労働時間で評価されている

この国の労働行為のカウントというのは、基本的に労働に費やした時間で測るルールになっている。
結果じゃないんですよ。ですから、働いた時間にどういう働き方をしたかという要素は給料と無関係なんです。定時までに倍の仕事したとしても、それはカウントしてくれません。サボって残業をすると、残業部分には給料が発生するんですよ。
なぜならば、仕事の量ではなく仕事をやった時間にお金が出ているから。

なぜそうなるんでしょうか?これ、非効率だと思いますでしょ。

それは、単純に“定量化しやすい”からなんですよ。
ほとんどの労働者っていうのは、直接マネーを生む仕事をしていません。
ですから「これだけ働いて、これだけのマネーを作った」という、成果主義的な評価をスタンダードにすることはできないんです。

一番単純なのは、働いた時間で評価するという方法だったんですね。

これが最も適切な評価になってしまう程度には、労働者の労働っていうのは大した価値を生んでないっていうことなんですよね。

労働者人口を増やすには、生活経費の増大合わせての昇給が必要だった

戦後の日本では、とにかく人が足りなかった。
働く人を増やさないと国がなくなっちゃうんで、そこで是が非でも労働者人口というのを増やす必要があった。

ですから戦後日本では、何でもいいから子供を産んで増える、これが大事だったんですよ。子供を産むだけじゃなく夫婦で3人以上産んでくれ、そうしないと人口が増えないから。

だから、誰でもなんでもいいから結婚して、子供を3人以上産んでくれ。

今この国で子供3人産みたいですか?ちょっと無理だなって思いません?経済的に。

人間なんて年中発情期の哺乳類ですから、生存コストが賄えれば、ねずみ算式に増えるはずなんです。それほど際限なく増えるわけなんですよ。でも、お金がないから増えないんです。
今の少子化というのは、単純に皆が貧乏になったっていうだけの話なんですね。
戦後日本は経済もズタボロだったのに皆で子供3人以上産まなきゃいけないという、ちょっとクレイジーな世界だったんですよ。

そのためには、子供を産めるだけの所得を用意してあげなきゃいけなかった。
そうじゃないと子供を産めないからです、だから用意した。誰が?国がって話です。

ちなみに家族が増えると、労働力再生産の経費が増えるでしょう。皆が結婚して子供をたくさん産もうとすると、生活の経費というのが増える。
なのでその経費を保障しなければ国民は子供を産んで増えてくれない。
だからこの国の作戦は労働者の個別の生産性、要はこの人がこれだけ能力があるから一人でね何人分の仕事をするとかそういうのに関係なく、年齢によって給料を上げていくシステムというのが必要だったんですよ。

そうしないと、年齢が上がって結婚して子供を産むというサイクルが生まれないからです。
これが、いわゆる戦後スキーム。
戦後スキームとは、年功序列年次昇給・終身雇用・企業別組合、この3点セットだったんです。

この話の詳細は57話でやりました。終身雇用の崩壊の話です。これもう150話以上話したんですね、昔に。これ恐ろしいですよ、よくもまあこんなに無駄なラジオを延々とやったもんだと思います。それはまあいいか。

年齢における給料のピークと労働生産性のピークは合致しない

一般的に、成果主義に代表されるようにマネーを生む仕事をしたら、その額に応じて給料が上がる。これが成果主義ですよね。「マネーを生んだらお給料を上げてあげるよ」という成果主義であれば、生産性が高い年代の給料、いっぱいマネーを生むような生産性の高い世代の給料が、最も高くなるはずなんですよ。
でも、この国はそうなっていない。
この国の平均所得は、年齢とともに上がっていき、ピークは50代の後半にある。
20代は、だいたい平均で300万ぐらい。直線的に上昇して、55歳で660万が平均になり、そこからガクっと下がって65でまた300万に戻る、というような分布をしています。

ですから、基本的に定年に向かって直線的に金額が上がっていく、というのがこの国の平均の所得モデルなんです。

出典:厚生労働省 国民生活基礎調査 世帯主の年齢階級別にみた1世帯当たり-世帯人員1人当たりの平均所得金額

一方、労働生産性という指標を見てみると、結構特徴的な二峰性になっているんです。

まず40代中盤、ここに大きな山があって20代の倍以上の生産性というのを持っている。
40代の中盤の人というのは、20代のペーペー2人分の金を生む生産性があるというんですよね。そこから50に向けてガクッと下がるんです、そして60近くにもう一個のピークが来てガクッと上がるんですよね。
この60近いピークというのが何を表しているかというと、会社のお偉いさん達が役員としてマネーを動かすことで発生する生産性を表しているんです。

この階層は、少ない人たちが大きな価値を生産してるっていう解釈になってくる。
このメインのピークっていうのは、いわゆる働き盛りの40代の中盤、ここが事実上最も労働生産性が高いセグメントになるんです。
ですから成果主義であればここの給料が一番最大になるはずなんですよ。
さて、生産性が最も高いのが40台の中盤、給料のピークはねそれとは遅れて50代の中盤、だいたい10年のずれがありますね。
この二つのセグメントの生産性、40代中盤と50代中盤って、大体倍ぐらいの違いがあるんですよ。
40代中盤の生産性というのは、給料が一番高い50代中盤の倍ぐらいの生産性があるんですよ、そのぐらいの違いがある、
ですから、本来ならば40代の中盤は50代中盤の2倍ぐらいの給料になるはずなんですよ、成果主義ならばね。
ですが実際は倍どころか、50代中盤の方が大体30%ぐらい(40代中盤より)平均給料が高いんですよね。
一言で言えば、日本の社会っていうのは大量の無駄飯喰らいを高給で雇っている、という構造になります。

「トラより補足」

所得の部分、ラジオ本編の金額と添付のデータで金額が合致していませんが、グラフは参考資料と考えそのまま文字起こししています。労働生産性に関する統計調査・グラフデータは、見つけられませんでした…。

大体の日本国民が年次昇給システムの恩恵に預かっている

これだけ聞いてどう思いますか?

これについて「不公平だ!そんなやつの給料は安くて良い」と思ったのなら、それは大いに浅はかなんですよ。そうはならないんです、この国は。

答えからいうと、日本の国民の大体80%にとっては、この形が実は最も幸せなんですよ。

自分がトップ20%の人材だっていう風に自信を持って言えない人間、80%の人間はこの国の雇用行政によって守ってもらってます。文句を言ったらバチが当たる存在なんですよ。

そんなことを言うと、怒り出す人っていうのが絶対にいます、でもそうなんですよ実際に。

具体的にどれぐらいの金額の恩恵にあずかっているか?
これが分かっていない人というのが、大量にいるんですよ。
成果主義になったら自分の給料が一体いくらになるのか、これを知ったら、糞みたいな社会が実は幸せだったというのに気がつくと、僕は思うんです。

今日のまとめ。給料が上がらない理由の一つは、生産性と給料は無関係だから

さてね、長々と給料が上がらない理由その1を話してきたんですけれども、まだピンとこないよね。
その1というのは『給料は労働力再生産のコストに過ぎない』、ですから労働時間に紐付いていて、内容と関係がないです。
生産性と給料の間には関係がなく、単純に年を取ると給料が上がるっていうのが第一の理由なんですよ

これドン引きでしょう?

この話、セミナーでやるんですよ、皆を前にして。この話をしたら、「こいつは一体何を話してるんだ?」みたいな感じでお通夜みたいな雰囲気になりますよ。
でもこの話、ここから更にどん底にもう1回落ちるんですよ。
だってこのネタ、労働者の立場で給料上げろと言うのがいかに無意味な主張か、というのを叩き込むための憎まれ役を買って出る、セミナーのネタですからね。
ここから回り回って、モチベーションを創出するっていう話に持っていくのはなかなかのアトラクションなんですよ。
でもそのくだりを聞きたければ、セミナーにでも呼んでください。
呼ばれても行きませんけどね。

後半では、僕が最初の方に言った2つ目の理由、『首にできない、急にできないから給料上がらない』の法律の話に移っていきましょう。今日は一回切りまーす。

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